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第9回 生命資源研究・支援センターシンポジウム

『受精の神秘を遺伝子操作動物で可視化する』

   東京大学 医科学研究所システム 疾患モデル研究センター 発生工学研究分野  教授
   東京大学 医科学研究所システム 疾患モデル研究センター センター長
   熊本大学 生命資源研究・支援センター 客員教授   岡部 勝

 哺乳類の精子は射精されたままの状態では受精能を有しておらず、雌性生殖路内に入ってさまざまな生理学的な変化を起こし受精能を獲得(capacitation)する。受精直前には先体反応と呼ばれる先体部分の大規模な膜構造変化を起こすことが卵子との融合に不可欠である。しかし分子生物学的なメカニズム解析は十分に成されておらず受精現象は依然として神秘のベールに覆われたままである。

 我々は、真の融合因子を探索し、ノックアウトマウスの系を用いて精子上の融合因子としてIZUMO1を、また卵子側の融合因子としてCD9を見出している。しかしながら、現在のところこれら因子の相互作用は認められていない。融合の仕組みをより詳細に記述するために、先体反応や融合時における挙動をIZUMO1に変異を入れた遺伝子操作動物を用いて検討したところ、IZUMO1が膜上をダイナミックに移動する様子が明らかになり、受精の瞬間を可視化することができた。