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第9回 生命資源研究・支援センターシンポジウム

『AIMは現代的疾患群の経穴か?』

   東京大学大学院医学系研究科疾患生命工学センター分子病態医科学部門 教授
   熊本大学 生命資源研究・支援センター 客員教授   宮崎 徹

 血中に高い濃度で存在するAIM (Apoptosis Inhibitor of Macrophage)は、マクロファージが産生・分泌し、マクロファージ自身のアポトーシスを抑制する分子として私たちが発見した分子である。最近私たちは、AIMが肥満を基盤とし、現代社会で患者数が増加している様々な疾患群の病態に重要な役割を果たしていることを明らかにしてきた。AIMはCD36分子を介したエンドサイトーシスにより脂肪細胞内に取り込まれ、蓄積した中性脂肪を遊離脂肪酸とグリセロールに分解(lipolysis)する。その結果、脂肪細胞の大きさは縮小する。こうしたAIMの脂肪分解作用は肥満しつつある生体においては顕著な抗肥満効果を示すが、肥満が進行した状態で高い血中濃度のAIMが高度のlipolysisを起こし高濃度の脂肪酸が細胞外に放出されると、脂肪細胞上のTLR4に対する刺激を介して自然免疫を活性化させる結果慢性炎症を発症し、ひいてはインスリン抵抗性を引き金とする糖尿病や動脈硬化などの様々な生活習慣病の疾患連鎖を惹起する。我々はさらに、肥満からインスリン抵抗性獲得に至る過程におけるAIMの重要性に加えて、肥満に伴う自己免疫疾患や肝臓病の発症・増悪に多角的に関連することを見出した。このようにAIMは、現代社会で増加する様々な疾患群の底流に存在し、いわば経穴(ツボ)となる共通した病態メカニズムを制御する分子である可能性が高い。これらの新知見を紹介すると共に、AIM創薬による、生活習慣病だけにとどまらない様々な現代病に対する新規治療法開発の可能性を討議する。