ニュース

第9回 生命資源研究・支援センターシンポジウム

『遺伝子改変マウスを用いた多機能な遺伝子の機能解析』

   東京大学 医科学研究所システム 疾患モデル研究センター 発生工学研究分野  教授
   東京大学 医科学研究所システム 疾患モデル研究センター センター長
   熊本大学 生命資源研究・支援センター 客員教授  吉田 進昭

 発生工学的手法を用いた遺伝子改変マウス作成は、遺伝子の生体内での機能の解明、ヒトの疾患との関連性など、生物学の多くの分野に非常に有用な解析手段を提供してきた。マウスの網羅的遺伝子ノックアウトが世界規模で進行中であるが、哺乳類のゲノム上で大部分を占めるタンパクをコードしない領域やエピジェネティクスの問題、遺伝子のアイソフォームの解析など、未解決の問題は多く存在する。ここではコンディショナルターゲティングを用いた遺伝子の機能解析の例を紹介する。

 ES細胞の機能維持に重要な遺伝子として同定したPTB (Polypyrimidine tract binding protein)は、選択的スプライシング制御やmRNAの安定化、IRES依存的翻訳制御などの機能を有するRNA結合蛋白をコードする遺伝子であり、多くの組織で発現している。このPTBのES細胞における機能、神経系幹細胞、生殖細胞などにおける機能解析は、遺伝子の多機能な側面をわれわれに教示してくれる。