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第9回 生命資源研究・支援センターシンポジウム

『遺伝子改変マウス作製の近年の動向』

熊本大学 生命資源研究・支援センター 技術開発分野  助教  竹田 直樹

 遺伝子改変マウスは生命科学の研究において誰もが用いる事が可能な主たる解析ツールの1つとなっており、様々な系統が作製されそれらを利用するリソースやバンクが充実しつつある。当施設においてもEUCOMM (The European Conditional Mouse Mutagenesis)やKOMP(The Knockout Mouse Project)で作製されたKOクローンから、キメラマウスを作製する依頼が近年増加している。

 その一方でこれらリソースの系統数はまだ十分とはいえず、目的とする遺伝子のKOクローンがまだ樹立されていない場合や、コンディショナルKOマウスは入手可能だがdeleter Cre/FLPマウスがない場合には、研究者が自ずから作製することとなる。遺伝子改変マウスの樹立と作製法は改良が重ねられているが、最終的に個体を得るには胚操作が必要であり、その為の投資と技術的習得の必要性が、マウスでの解析に踏み出せない要因になっている。

 当技術開発分野は、この様な悩みを持つ研究室に技術支援を行うために、平成4年に医学部附属遺伝発生医学研究施設トランスジェニック実験室として設立され、これまでに800件以上の遺伝子改変マウスの作製をおこなってきた。

 従来のTgマウス、KOマウスに加え、TalenやZFNなどの新技術への期待もあり、今後も遺伝子改変マウスを用いての研究は益々多くなると期待できる。今後の研究の一助になる事を期待して、これまでの当分野での経験を紹介したい。